本報告書について
2006年より実施しているPMIのPulse of the Profession®は、国際的組織内でプロジェクト マネジメントサービス、プログラムマネジメントサービス、またはポートフォリオマネジメ ントサービスを提供する専門家を対象としたグローバル規模の調査です。Pulse調査はプロ ジェクトマネジメントの現在と将来に関する主要なトレンドを図示します。第三者データの 分析とともにプロジェクトマネジャー、プログラムマネジャーおよびポートフォリオマネジ ャーからのフィードバックと洞察をまとめた独自の市場調査です。
2018年のPulse調査は、政府、情報技術(IT)、電気通信、エネルギー、製造、医療、建設を含む 広い産業界のプロジェクトマネジメント実務者4,455人、上級幹部447人、PMO役員800人から のフィードバックと洞察を特集しています。回答者の活動拠点は北米、アジア太平洋、欧州、中 東・アフリカ(EMEA)、中南米地域にわたります。
本報告書の分析および本プロジェクトに基づくデータ・情報には、大手企業リーダー8人および PMO役員8人のインタビューにより得られた見識も含まれています。
なお、業界および地域の比較については PMI.org/Pulse をご覧ください。
目次
CEOからのメッセージ: 価値の提供
世界を代表するプロジェクトマネジメントの提唱者 である我々は、組織におけるすべての戦略的変化 がプロジェクトやプログラムを通じて生じることを認 識している。
総括
公式なプロジェクトマネジメントに投資する組織ほど より効果的に変化を推進し、より良い結果を得る。
グローバルプロジェクト マネジメントの現状
プロジェクトマネジメントの現状を探る。
プロジェクト成功の 重要な推進要因
正確な統計分析によると、何百万ドルにものぼる 組織の無駄の削減に 3 つの重要な要因が深く 係わっている。
重要な推進要因#1
エグゼクティブ・スポンサーシップ
重要な推進要因#2
プロジェクト・スコープの管理
重要な推進要因#3
価値の提供能力
新しい働き方
Pulse調査の第10版を迎えるにあたり、新しい 働き方を概説する。
洞察 1
価値の提供の将来
洞察 2
スキル開発
洞察 3
破壊的イノベーションの管理
アイデアの実現
組織の将来はプロジェクト・ポートフォリオのみに依存す るものではなく、プロジェクトそして未来を実現させる人 々の手中にある。
ギグエコノミー
いかなる組織も正社員プロジェクトマネジャーと個人 請負プロジェクトマネジャーとの理想的なバランスを 見極めなければならない。
結論
付録
我々はより多くの価値を実現できる
「もしあなたの組織がプロジェク卜マネジメン卜に不得手であるな ら、戦略の最終的な実現においてあまり にも多くのものが危矣にさらされていることになる。」
マーク・A・ラングレー
PMI会長兼最高経営責任者
プロジェクト・パフォ一マンスが低いことを原因として、投資1ドルあたり9.9%が無駄に費や されている–言い換えれば、投資額10億ドル当たり9,900万ドルが浪費されている計算になる
(出典: 2018年 Pulse of the Profession®)
注記:上記金額はUSドルだが、パ一センテ一ジはすべての通貨に該当する。
グローバル規模の資本投資総額にもとづくと、約20秒毎に約100 万ドルーあるいは1年毎に2兆ド ルの無駄が発生していることになる
(出典: Brightline Initative™)
プロジェク卜志向型産業のGDP貢献額は今後20年間で20.2兆ドルに達すると予測されいる
(出典: 2017-2027 Project Management Job Growth and Talent Gap Report)
数十億ドルあるいは数兆ドルもの無駄の削減が組織や市場、世界経済ともたらす影響は計り知れない
プロジェクト・パフォーマンスが低いことにより大量の無駄・浪費が発生してい るが、それには多くの理由がある:
1) 組織が、戦略の設計と実現のギャップを埋められずにいる。
2) 戦略がプロジェクトを介して実現されることを経営幹部が認識して いない。
3) 組織の戦略実現における推進要因としてのプロジェクトマネジメン 卜の本質的重要性が十分に理解され ていない。
世界有数のプロジェクトマネジメント提唱者である我々は、すべてのプロジェ ク卜の裏には必ず確固としたアイデアがあることを知っている。効率性を重視 する組織もあれば、マ一ジン増加やイノベ一シヨン推進を図る組織もあるが、 追求するべネフィットが何であれ、組織は目的達成の手段としてプ ロ シェク 卜を用いる。そしてプロジェク卜つまりアイデアの実現に貢献しているのが、こ れら組結のプロジェクトマネジャ一である。
2006年、我々はPulse of the Profession®のグローバル調査を通じ、 プロジェクト専門職に関する分析、研究、リサ一チを始めた。私とチ一ムは 今年のPulse調査の結果を見ながら 、観察した変化について熟考した。す るとあるひとつの普遍定項、すなわち実証されたプロジェクトマネジメント実 務慣行が導入されると、組織はより大きな成功を収めるということが再確 認されたのである。 実際に、我々が「チャンピオン」と呼ぶ高パフォ一マンスを誇る企業は、い わゆるアンタ一ノパフオ一マ一の企業と比べ、パフオ一マンスが低いことによる 無駄が21倍以上少ない。このような優秀な企業(「チャンピオン」)は プロジェクトマネジメント実務慣行に精通しており、我々のリサ一チが裏 付けるように、以下のコンピテンシ一がプロジェク卜成功率を高めることを 認識している。
• エグゼクティブ・スポンサ一の積極的関与への投資
• プロジェクト・スコープの管理
• 価値の提供能力の強化
上述の重要な推進要因を、今日の破壊的イノべ一シヨンの環境に効果 的に実践することは容易ではない。しかしそうしなければあまりにも多くの ものがリスクに晒されてしまう。このため本報告書を読んで、いかにチャン ピオン(優秀な)組織がプロジェクトの成功を競争力として組織の前 進に活用しているか理解を深めてほしい。
共に大きな成果をあげよう。
マーク• A•ラングレ一
PMI会長兼最高経営責任者
総括
破壊的イノベーションの連続する現代において、新しいアイデアの創出や戦略のビジョン化 はすべての組織にとって必要不可欠である。しかしながら実質的な価値とベネフィットは、 ビジネスアイデアが机上のものから現実のものとなった場合に初めて得られる。アイデアを 結実させるプロジェクトマネジメントなくしては、アイデアはいつまでたっても単なるアイ デアに過ぎない。
2018年のPulse of the Profession® 調査は、効果的なプロジェクトマネジメントこそが組織の戦 略実施のカギとなり、ボトムラインに多大な影響を及ぼすという事実を再度立証する結果となっ た。実証されたプロジェクトマネジメント実務慣行に投資する組織は低パフォーマンスの組織と 比べ、より大きな成果を挙げ続けている。
この10年ほどの間に、我々はプロジェクト・パフォーマンス向上に有効な世界的トレンドをいく つも発掘してきた。2013年以降、プロジェクト・パフォーマンスが低いことを原因として組織が 無駄に費やした資金は13.5%から9.9%へと約27%減少した。このため組織は浮いた資金を他の 分野に再投資できるようになり、事業活動の加速化、生産の増大、より大きな成果の達成が可能 となった。
調査結果はまた、我々が「チャンピオン」*と分類する優秀な組織がプロジェクトを組織成長の手 段としていることを改めて浮き彫りにした。さらにこれらのチャンピオン組織はプロジェクトの 人材、能力、文化を発展させ続けている。このためプロジェクト成 功率も高く(「アンダーパフォーマー」に分類されるパフォーマン スが低い組織の32%に対しチャンピオン組織は92%)、より良い業 績を収めている。またプロジェクト・パフォーマンスが低いために 生じる金銭的な損失は21分の1、つまり1ドル当たりの無駄はわずか 1.4%に留まっており、プロジェクト・マネジメント能力を注視しな い組織の29.1%と比較して格段の差が見られた。
結局のところ、チャンピオン組織は適切なスキルを備えたプロジェ クトマネジャーやプログラムマネジャーを確保し、今日の動的環境 における変化に対応している。このような組織はプロジェクトやプ ログラムを通じて組織的変化を成し遂げ、競争相手より優れた能力 によって何百万ドルもの無駄の削減を実現している。
プロジェクト・パフォー マンスの低さにより、1 ドル当たり9.9%の無駄 が発生している
変化の速度とスコープか ら見ても、プロジェクト マネジメントにおける卓 越した能力は必要不可欠 である
パフォーマンスレベル*
今日の熾烈な競争環境ではスコープ、時 間、コストといった従来の尺度は必要だ が、もはやそれだけでは不十分であり、 プロジェクトが期待されたビジネス・ベ ネフィットを実現できる能力こそが組織 に求められている。したがってプロジェ クト成功度の評価にあたり、従来の指標 に加えてベネフィット実現における成熟 度レベルを分析した。このような広い視 野を通じ、我々は調査に参加した組織の パフォーマンスレベルを判断した。
チャンピオン組織:
80%以上のプロジェクトをスケジ ュール通りに予算内で完了させ、ビ ジネス目標を達成した、ベネフィッ ト実現の成熟度が高い組織。
アンダーパフォーマー組織:
スケジュール通りに予算内で完了 させ、ビジネス目標を達成したプ ロジェクトが60%以下で、ベネフ ィット実現の成熟度が低い組織
グローバルプロジエク卜マネジメン卜の現状
2006年、我々はグロ一バル調査を通じプロジェクト専門職に関する分析、研究、リサ一チを開始した。 ここに報告されているのはグロ 一バルプロジェクトマネジメン卜の現状である。
プロジェクト成功の重要な推進要因
チャンピオン組織は、適正なプロジェクト/プログラム/ポートフォリオマネジメント実務慣行が競争力をもたらすことを理解し ている。しかしそれ以外にもできること、なすべきことは常にある。この6年間、我々はさらなるリサーチを行い、プロジェク ト成功に最も大きな影響を与える要素が何であるかを追及してきた。そして正確な統計分析の結果、何百万ドルにものぼる金 銭的損失の削減に役立つ3つの要因を突き止めた。
1. エグゼクティブ・スポンサーの積極的関与への投資
2. スコープ・クリープやプロジェクト・スコープに対するコントロール不能な変更の回避
3. 価値の提供能力の成熟
1. エグゼクティブ・スポンサーへの投資
プロジェクトへのサポートは非常に貴重である。エグゼクティブ・スポンサーの積極的な関与は、イ ンフルエンサー(影響力者)とインプリメンター(実務者)間のコミュニケーションギャップを埋 め、相互間の協力や支援の強化、プロジェクト成功率の上昇、リスクの低減に寄与する。分析結果か ら、プロジェクトの当初目的達成における最大の推進要因はスポンサーの積極的関与であることが判 明している。エグゼクティブ・スポンサーが積極的に関与するプロジェクトの割合が高い組織(プロ ジェクト全体の8割以上)は、同割合の低い組織(プロジェクト全体の5割未満)と比べ、成功した プロジェクトが40%以上多いことがわかった。
有能なプロジェクト・スポンサーは組織内での影響力を活用し、プロジェクトの戦略との整合、障害 の除去、組織的変化の推進を通じて様々な課題を積極的に克服する。このような一貫した取組み姿勢 やサポートを背景に、プロジェクトの推進力は着実に維持され、成功率も高められる。
プロジェクトを実現に導くエグゼクティブ・スポンサーの存在は、プロジェクト成功の必須条件であ る。実際に約4分の1(26%)の組織が、プロジェクト失敗の主な原因としてスポンサーのサポート 不足を挙げている。また、いわゆるアンダーパフォーマー組織とチャンピオン組織ではほぼ2.5倍の 開きがあり、スポンサーのサポート不足がプロジェクト失敗の主要原因であったとする回答は前者が 41%だったのに対し後者はわずか17%だった。
スポンサーのサポート不足が プロジェクト失敗の主要原因
英国インフラストラクチャー・プロジェクト庁(IPA)の チーフ・エグゼクティブ、トニー・メグズ氏は、「我々 は、卓越したプロジェクト・リーダーが優れたプロジェク トを実現させることを知っている。」と指摘。「卓越した プロジェクト・リーダーの要件には積極的に関与するスポ ンサーであることが含まれ、それによりステークホルダー との協調が高まり、ビジョンも効果的に伝わる。政府でも 我々はこの点を理解しており、オックスフォード大学サ イード・ビジネススクールとの共同開発による国際的な メジャー・プロジェクト・リーダーシップ・アカデミー (MPLA)を通じ我々のスポンサーを支持している。」と 語っている。
「卓越したプロジェク ト・リーダーの要件に は積極的に関与するス ポンサーであることが 含まれ、それによりス テークホルダーとの協 調が高まり、ビジョン も効果的に伝わる。」
トニー・メグス
インフラストラクチャー・プロジェクト庁(IPA)
チーフ・エグゼクティブ
我々のリサーチから、エグゼクティブ・スポンサーの積極的関与がプロジェクト成功におけ るNo.1の推進要因という結果が出ており、6年連続してその順位に変わりはない。しかしな がらアンダーパフォーマー組織では依然としてエグゼクティブ・スポンサーを擁するプロジ ェクトやプログラムの割合は低いままである(チャンピオン組織の83%に対しアンダーパフ ォーマー組織は42%)。その結果、世界中の多くの組織で巨額の無駄が発生しているが、組 織が実際に成果を得るため導入できるシンプルな解決策を我々は見い出している:
■ プロジェクトマネジャーとエグゼクティブ・スポンサーの関係を支持する文化の創生
■ エグゼクティブ・スポンサーを対象としたスキルや活動を含むロードマップの策定
■ エグゼクティブ・スポンサーに有益な訓練の実施
2. スコープの管理
スコープ・クリープ、すなわち「時間、コスト、リソースの調整がなく、成果物やプロジェ クト・スコープが管理されずに肥大化すること」は、どのプロジェクトにおいても発生し得 る。スコープ・クリープが発生すると、金銭的な損失に留まらず、満足度の低下やプロジェ クト・ベネフィット実現の遅延を招く。このため必然的に当初予定よりもさらに多くの作業 が追加され、その作業のおかげでプロジェクトの目的のひとつあるいは複数が達成できずに 終わったり、ビジネス好機を逃したりすることにもなりかねない。
過去12ヶ月間に完了したプロジェクト全体の52%でスコープ・クリープあるいはプロジェク ト・スコープの変化の肥大化が発生しており、その割合は5年前の43%から大幅に上昇して いる。チャンピオン組織ではスコープ・クリープはまだ管理されている方だが、平均でもプ ロジェクト全体の約3割においてスコープ・クリープが発生している(チャンピオン組織で 33%、アンダーパフォーマー組織で69%)。
特にスコープが明確でない場合は、スコープ・クリープの管理はほとんど不可能になる。 一方、作業範囲の設定による継続的な要件改善プロセスは、顧客の期待充足に有用であ る。前回調査から我々は、プロジェクト失敗の3大要因-組織における優先順位の変化、プ ロジェクト目的の変化、誤った要件定義-がスコープ・クリープの発生につながることを 把握している。
新たな技術やシステムもスコープ・クリープに影響を及ぼす。カナダ国防省プロジェクト マネジメント支援機構ディレクターのダニエル・エヴェール氏は、「何もかもがものすご い速さで動いている。我々がある要件を最初に識別したときから最初にその要件を実現し たときまでの間にあまりにも急速に技術が進化し過ぎて、当初要件の一部がより新しくよ り良いシステムに追い越されてしまった。このような事態は時としてスコープ・クリープ と誤解される場合がある。物事が非常に速いペースで動くため、業界との早期・継続的関 係を通じて取得プロセス全体での要件の発展を可能にする、今まで以上にフレキシブルな 実務慣行を我々は開発しなければならない。」
また我々の調査結果はプロジェクトの複雑度もスコープ・クリープに関係していることを 示唆しており、複雑度の高いプロジェクトの割合は2013年の35%から2018年には41%に 上昇している。コネクテイビティの非常に高い今日の環境でスコープを管理するには、プ ロジェクト実現のアプローチに関わらず、有能なステークホルダーとチェンジ・マネジメ ント(変更管理)が必要とされる。
各スプリント内のスコープを厳密かつ確実に管理するため、様々なアプローチを用いたあら ゆる試みが行なわれている。アジャイルな世界においてチームは要件のトレードオフを行い、 作業は各繰り返しの初めに再精査される。PMIのPM NetworkでCST、PMI-ACP、PMPとして 活躍するジェシー・フェウェル氏は、「何がリーズナブルで何がリスキーか、また何が重要で何 が便利かに関する協力的対話の機会が必要だ。」と述べている。
アジャイル実務ガイド、プロジェクトマネジメント知識体系ガイド(PMBOK® Guide)第5版(ソフト ウェア拡張)の両方のチームの中心メンバーであるフェウェル氏は、ダイナミックなスコープ・ オプションを提案、「未着手の成果物を同等あるいはそれ以下のコストのいかなるものとも置 き替えることは可能だ。我々がビジネス上の制約内にとどまる限り、選択肢はある。」と主張 している。
アプローチを問わずスコープを管理する方法は多数あり、例えばプロジェクト実現途 中のスコープ変更を可能にする反復アプローチの採用、信頼できる顧客とのフィード バックループの確立、ビジネス・ベネフィットの認識促進などが含まれる。このよう な手法は詳細情報を得た上でのビジネス決定にもとづいたより慎重なスコープ内のシ フトを導く。またチームに順応性、他者の意見を聞く姿勢、学習意欲があれば、プロ ジェクトの成功はいっそう大きなものになる。
3. 価値実現能力の成熟
価値実現能力は、組織のプロジェクトやプログラム実施を可能にする多種多様なコン ピテンシーである。このような価値実現能力の発達・成熟は、効率と創造性のバラン スおよび継続的改善の促進を通じて変化する市況への素早い適応を可能にする。それ により組織はリスクの最小限化、コストの管理、価値の増大といった能力を身につ け、さらに予測アプローチ、反復アプローチ、漸進的アプローチ、アジャイル・アプ ローチを含む、すべてのアプローチのなかからプロジェクトおよび組織のニーズに適 したアプローチをプロジェクト実現に活用していくのである。
ただし我々の知る限り、価値実現能力の成熟している組織はまだ少なく、価値実現能 力の成熟度が非常に高いと回答した組織は全体の10分の1未満だった。また5分の2 が、変化に寛容な文化の創生、プロジェクトマネジメントの評価、テクノロジーへの 投資は優先事項であると回答した。このほかプロジェクト・スポンサーのためのスキ ル開発を優先事項とみなす組織は全体の4分の1、総合的な価値実現能力の開発を優 先していると回答した組織はわずか31%だった。一方、チャンピオン組織の87%が 価値実現能力の発達に投資し価値実現能力の成熟度が高いと回答したが、アンダーパ フォーマー組織では5%に留まり、顕著な差が見られた。
さらに価値実現能力を開発する組織はプロジェクト・パフォーマンスの成果もより大 きい(図1参照)。その目標はより良いベネフィットの実現、変化への適応、顧客中 心主義の実践にあり、すべては継続的改善と成果向上を狙いとしている。
価値実現能力の成熟はリスクの最小限化、 コストの管理、価値の増大を可能にする
“Learn Enterprise: How High Performance Organizations Innovate at Scale” の共著者であるバリー・オラ イリー氏はPMIの2017年Pulse報告書、The Drivers of Agility(アジリティの推進要因)の中で、成功する企 業は「何が効果的で何がそうでないかを学ぶため、常に試行錯誤を続けている」と指摘。さらに、「目標の明 確化、フィードバックループの短縮化、アウトプットよりも成果(アウトカム)に基づく進捗管理による顧客 ニーズ充足に重点を置いている。」と述べている。
新しい働き方
我々は数十年にわたりプロジェクトマネジメントという専門職を分析、研究、リサーチし、より良いプロジェクト成果を 生み出すトレンドや実務慣行を少なからず発掘してきた。それにもかかわらず、大きな成功につながる重要能力を欠く組 織は依然として存在する。このことは、「もし組織が今日の課題の克服に苦戦しているのであれば、将来の破壊的イノベ ーション時代への準備は万全だろうか?」という問いを我々に投げかけている。
今年Pulse調査は第10回を迎えるが、これまで我々はプロジェクトマネジメントの将来 そして新しい働き方の研究に多くの時間を費やしてきた。現行の最善慣行、いわゆるベ ストプラクティスがデジタル連結世界で不十分なら、再編能力や再調整能力は差別化の 重要なカギとなる。その結果、既存のベストプラクティスから今後数年間に出現し得る ネクストプラクティスへの進化が拡大しつつある。
組織は今後、視線および思考を前に向ける必要がある。プロジェクトチームがデザイン 思考、リーン思考、アジャイル思考などのスキルを混合させるなかで、新たに現われる 問題を注視しなければならない。そのため価値実現活動に変化をもたらしているトレン ド、プロジェクト実務者の適応、組織の対応についての早期的視点を、本報告書から読 み解いてほしい。
2018年を通じ我々は、破壊的技術がもたらす影響の制御-ベストプラクティスからネ クストプラクティスへの進化-について掘り下げる計画だ。今後も、組織にとって難題 となるような新技術、そしてそのような難題を克服し好機に変えられるような人材のニ ーズ増大について報告していくのでぜひ期待していただきたい。
もし組織が今日 の課題の克服に 苦戦しているの であれば、将来 の破壊的イノベ ーション時代へ の準備は万全だ ろうか?
洞察 1:価値の提供の将来は予測アプローチ、反復アプローチ、漸進 的アプローチ、アジャイル・アプローチ、ハイブリッド・アプローチ など多種多様なアプローチにあり、次に来るものが何であれ我々の働 き方を変えていく。
組織は新しいプロジェクトを毎年打ち出しているが、それはおそらく 今後も変わらないだろう。変わりつつあるのは組織の取り組むプロジ ェクトの種類およびプロジェクト完了の方法である。
プロジェクトの成功は、プロジェクト実現をサポートする適切なアプ ローチから始まる。組織はこれからも2種以上のプロジェクトマネジ メントのアプローチを活用し、異なるテクニックを組み合わせて個々 が直面する課題に対処していくだろう。2018年の調査結果によると、 アプローチの種類(予測、アジャイル、またはハイブリッド)にかか わらず、正式なプロジェクトマネジメントのアプローチを用いる組織 は予算内でスケジュール通りに目標を成功裏に達成している(図2参 照)。さらにチャンピオン組織では、プロジェクトのニーズに最適な アプローチの選択に秀でていることが判明している(図3参照)。
調査回答者の組織は過去12ヶ月間にプロジェクトの約半数近くに予測 アプローチを、また約4分の1にアジャイルまたはハイブリッド・アプ ローチをそれぞれ活用したと報告している。
さらに我々は、組織がデザイン思考、コグニティブ・コンピューティ ング・システム、機械学習、人工知能(AI)、DevOpsなど、現時点 ではニッチな実務慣行を組み合わせを含めた新しい働き方を実践し、 次への道を開こうとしていることも認識している。今や新しい破壊的 技術、天災・人災、政治的/経済的要因が日々の仕事に影響を与え、と きには将来の軌道を変えている、と言っても過言ではない。
洞察 2: プロジェクト専門家はスキルを拡大し、新たな方法を身につける。
変化はプロジェクトと機会を生み出す。そしてより多くのプロジェクトがより多くのプ ロジェクト関連雇用を創出する。実際に我々のJob Growth and Talent Gap(雇用の拡 大と人材のギャップ)報告書によると、西暦2027年までに雇用者はプロジェクトマネ ジメント関連の業種で8,770万人の人材を必要とし、有能かつ経験豊富なプロジェクト/ プログラムマネジャーの需要はますます増大する見込みだ。また競争力・適応力維持の ため、組織はプロジェクトマネジメント能力向上に今まで以上の重点を置くだろう。チ ャンピオン組織は既に、訓練、正式なプロセス、明確なキャリア・パス、知識移転を通 じ、人材により多くの投資を行なっている(図4参照)。
さらにPMO役員およびエグゼクティブ・リーダーを 対象に実施したインタビューも、プロジェクトマネ ジャーの役割が以下のように拡大しているという我 々のデータを裏付ける結果になった。
• 戦略的アドバイザー:プロジェクトを計画、実 行 し、成果を実現する
• イノベーター:成果物の所有者/開発者として 行動する
• コミュニケーター:相手を問わず常に明瞭・簡 潔に伝達する
• ビッグ・シンカー(大きな視野をもつ人):適応 能力、柔軟性があり、人間関係を維持する能力 が高い
• 多才なマネジャー:ウォーターフォール、スク ラム、アジャイル、リーン、デザイン思考の全 モデルアプローチの活用経験を有する
プロジェクト専門家がいかにこれらのスキルを獲得 するか、今後はその方法も変化する。より速く、フ レキシブルで学習しやすいプロジェクトマネジメン ト方法やアプローチに対する需要は増大している。 またソーシャルメディアからWeb系ツールや学習管 理システムに及ぶ、絶え間なく変化する技術的環境 が多大な調査・実験の機会を提供する一方、オンデ マンド型、カスタマイズド型、問題特有型学習への シフトも加速すると予想される。また学習における イノベーションのおかげで、これからも新たな人材 は学習内容、時間、場所を問わず学び続けることが できるだろう。
洞察 3: 組織は自らのプロジェクト専門家を通じ、破壊的イノベーションに反 応するだけでなく、それを巧みに利用する。
変化の著しいダイナミックで複雑なビジネス環境は、卓越したプロジェクト/プログラム/ポ ートフォリオマネジメント能力に対するニーズの大きさを改めて浮き彫りにしている。チャ ンピオン組織の半数以上が、デジタルトランスフォーメーションは将来、仕事に重大な影響 を与えると感じており(図5参照)、調査回答者の4分の1(25%)強が、デジタルトランス フォーメーション対応でプロジェクトマネジャーに最も必要とされるスキルは学習力、理解 力、応用力、技術追従力だと考えている。このほかコミュニケーション力(22%)、リーダ ーシップおよびマネジメントスキル(18%)、変更管理、順応性、柔軟性(12%)などの能 力や資質も挙げられた。その結果として組織は、多才で経験・スキルに富むプロジェクトマ ネジャーやプログラムマネジャーの価値を再認識することになる。
プロジェクトマネジャーの獲得、訓練、保持の失敗は組織にとって悲劇的な結果を招きかね ない。リサーチからも、経験豊富な熟練のプロジェクトマネジャーがプロジェクトの成功、 当初目標の達成、ビジネス目的の実現の確率を高めることが確認されている。組織の戦略実 施能力におけるプロジェクトマネジメントの価値がいっそう明白になるにつれ、プロジェク トマネジャーはますます重要かつ戦略的な役割を担い、差し迫る破壊的イノベーション時代 に向けて組織の牽引役となるだろう。
「プロジェクト/プログラムマネジメ ントの観点から、ニューテクノロジー は異なるスキルの組み合わせを必要と する。それは新しい技術であり、新し い表現でもある。またそれはまったく 新しい考え方であり、プロジェクト/ プログラムマネジメントにとって非常 に大きなゲームチェンジャーだ。我々 がもっていた従来の考え方は応用でき ない。そのためすべての構成要素間の インターコネクティビティ(相互接続 性)を見極めなければならない。」
ハンズ・ハーヴィー
航空宇宙・輸送関連多国籍企業、ボンバルディア社
ISプログラム・プロジェクトマネジメント主任
「デジタル化対応に必要なプロジェク トマネジメント・スキルを開発するに は、プロジェクトマネジャーが知識を 更新しなければならない。プロジェク トマネジャーはもはや競争を応援する だけのチアリーダーではなく、戦略、 顧客の洞察、競争相手の洞察をもたら す存在である。」
チンタン・オザ
大手電気通信企業PMOディレクター
アイデアの実現
現代の変化のスピードと熾烈な市場競争ゆえに、業界を問わずすべての組織において今まで以上 に素早い調整力が求められている。そのため組織はプロジェクトを立ち上げ、成果の結実に期待 している。
得られた成果はスコープ、スケジュール、コストを含め、Pulse調査のなかでプロジェクト・パフォーマンス の指標として追跡される。これら変数の大半は時間を経ても変動しないが、その一方で1年前に比べてより多 くのプロジェクトでスコープ・クリープが発生し失敗とみなされている(図6参照)。
これは仕事の進め方における変化に起因すると我々は考えている。技術の進歩はすべての産業を混乱に陥れ、 働く人々の責務や機能的役割に変化をもたらしている。その結果、新しい働き方が現われ、新たなスキルに対 するニーズが生まれている。
我々は、組織の将来はプロジェクトのポートフォリオのみに依存するものではなく、プロジェク トそして未来を実現させる人々の手中にあることを理解している。組織の適切なサポートがあれ ば、プロジェクト専門家は以下の手段を通じてアイデアを現実のものにできる:
• 組織におけるリーダーおよび真のビジネスパートナーになる
• 的確な質問をする
• 管理対象プロジェクトのビジネス・ベネフィットを実現する
コミュニケーション/セキュリティ製品・電線・ケーブルの世界的販売業者Anixter International のCFO(最高財務責任者)、テッド・ドスチー氏は、「プロジェクトマネジャーが各企業におい て果たす役割は非常に重要だ。企業がプロジェクトやイニシアチブのビジョンを明確化するにあ たり、強力なプロジェクトマネジャーは大きな助けとなる。プロジェクトマネジャーによるプロ ジェクトマネジメント・スキルの活用は、プロジェクトが企業成長を促す成功となるか、実質的 利益のないリソース浪費の失敗となるか、その結果を大きく左右する。」と指摘している。
また大手電気通信会社PMP、PMOディレクターのチンタン・オザ氏も、「プロジェクトマネジャ ーはもはや競争の単なる傍観者ではない。技術的スキル、戦略、顧客洞察の面で幅広い知識の獲 得が求められている。」と述べている。
「企業がプロジェクトやイ ニシアチブのビジョンを明 確化するにあたり、強力な プロジェクトマネジャーは 大きな助けとなる。プロジ ェクトマネジャーによるプ ロジェクトマネジメント・ スキルの活用は、プロジェ クトが企業成長を促す成功 となるか、実質的利益のな いリソース浪費の失敗とな るか、その結果を大きく左 右する。」
テッド・ドスチ
CFO(最高財務責任者)
新開地の舵取り
この新たな環境で成功するには、従来のプロジェクトマネジメント・ス キルと今日の市場動向の理解、組織の製品・サービスに対する深遠な知 識、顧客の製品・サービス使用状況の把握のコンビネーションが必要とな る。PMI Talent Triangle®でも概略したように我々は技術的スキル、リー ダーシップ・スキル、戦略/ビジネスマネジメント・スキルの混合活用を 長期にわたり支持している。
技術的スキルはプロジェクト/プログラムマネジメントの中枢 ともいえるが、PMIリサーチの結果は今日の破壊的イノベー ションの環境で生き抜くには技術的スキルだけでは不十分 であることを示唆している。このため組織は価値実現に有 効な長期的戦略目標を支持できるコンピテンシー、すな わちリーダーシップおよびビジネス・インテリジェン ス面におけるさらなるスキルを求めている。我々は、このようなスキ ルには内的な変更プロジェクトや外的な顧客成果物の両方に関わる技 術進化の影響に対する理解も含まれると認識している。
自動車産業用パワートレーン部品メーカー、BorgWarnerのCIO(最 高情報責任者)、ジャマル・ファルハット氏は、「我々は必要なスキ ルセットの開発およびプロジェクトマネジャーの技能向上に努めてい る。我々にとってプロジェクトマネジャーは単なるインプリメンター (実務者)ではなく、社内コンサルタントでもある。ビジネスケース の探索、生み出される経済的価値の評価、提案された技術の実行可能 なイニシアチブ/プロジェクトへの変換はプロジェクトマネジャーの任 務の一環だ。」と述べている。
PMOとEPMO:
破壊的イノベーション への対応
今日の市場では破壊的イノベーションやエクスポネン シャル技術の活用機会に対する組織の取り組みにおい て、プロジェクトマネジメントオフィス(PMO)が深 く関与するケースは珍しくない。これらの技術はより 効率的な作業方法の促進など、内部的に活用される場 合もある。このほかPMOは組織と顧客のコミュニケー ションおよび相互関係の向上にも利用されている。
組織は引き続きPMOに権限を与えることで従来の管理 機能から、ステークホルダーへの進捗状況・成果の随 時報告およびコスト管理・品質改善へのアシストによ る価値実現のための管理機能へと焦点をシフトさせて いる。これはプロジェクト成功 の指標を確立・モニタリングし ていると答えた組織の85%で見 られた傾向である。
チャンピ オン組織 の80%は PMOを設置 し、72%は EPMOは組織 戦略との整 合性が高い とみなして いる
戦略的役割を果たすPMOと企 業規模のプロジェクトマネジメ ントオフィス(EPMO)は、例 えその名称が何であれ必要不可 欠な存在であり続けるだろう。 組織によっては変革オフィスと も呼ばれるEPMOは、戦略的イ ニシアチブに関して経営幹部を サポートする能力をもち、我々 のリサーチでも実際にそれが行 なわれていることを確認済みで ある。指数関数的に発展する技術(エクスポネンシャ ル・テクノロジー)、仕事スタイルや優先順位のこと なる複数世代の労働人口、より迅速な価値実現の需 要が結びつくなか、EPMOは組織にとっていっそう重 要な動的環境となった。チャンピオン組織の80%は PMOを設置し、72%はEPMOは組織戦略との整合性が 高いとみなしている。
これら破壊的イノベー ションの知識が必要不 可欠であり、「可能性 の芸術(可能なことを 実行する技術)を理解 し、これら技術の可能 性について先陣を切る ことができなければせ めて後塵を拝すること がないように状況を把 握しておくこと」が重 要である。
マイケル・チュイ博士
McKinsey Global Instituteパートナ
(Projectified with PMIにて)
破壊的イノベーションへの対処
絶え間なく変化する環境下で、プロジェクトマネジメントはデータ収 集、報告、モニタリング、情報共有などのエリアに影響をもたらして いる。デジタル時代のプロジェクトマネジメント・スキル開発はチャ ンピオン組織にとって重要であり(アンダーパフォーマ組織の15%に 対しチャンピオン組織は31%)、新技術の出現に伴いその傾向はさら に強まると予想される。
プロジェクトの世界における影響と機会について Projectified with PMI のポッドキャスト向けに話を聞くため、我々はMcKinsey Global Instituteのパートナー、マイケル・チュイ博士にインタビューを行な った。そのなかでチュイ博士は、人工知能(AI)、機械学習、デジタ ル化、ロボット技術を含むオートメーションについて、全セクターそ して全地域が影響を受けると指摘。実際にチュイ博士の組織がリサー チを実施した職業の60%以上において、その事業活動の30%以上が現 在実証されている技術の適応により自動化される可能性があると述べ ている。
我々がインタビューを行なった上級幹部は、以下のような破壊的イ ノベーション動向がビジネスに影響を及ぼしていると答えた:
• 自律走行車および自動運転車(ロボットカー)
• ビッグデータ
• 持続可能な開発、気候変動、再生可能エネルギー
• 顧客期待の速度
• データインテリジェンス
• 医療制度改革
• 競争激化
• 政府規制の増大
• 新技術
• 政治的変動
このような破壊的イノベーションが出現する新たな環境にプロジェクト専門家がどの ように向き合うべきか質問したところ、チュイ博士は破壊的イノベーションの知識が 必要不可欠であり、「可能性の芸術(可能なことを実行する技術)を理解し、これら 技術の可能性について先陣を切ることができなければせめて後塵を拝することがない ように状況を把握しておくこと」が重要だと答えている。
スキルの構築
今日の環境に反応、対処する際、プロジェクトマネジャーにとって重要なのは技術 的スキル以上の能力である。組織の戦略的目標やプロジェクトとの整合について十 分な情報があれば、プロジェクトマネジャーは変化により敏感に気づくことができ る。またリーダーシップ・スキルおよびビジネス上の鋭い洞察を有し、曖昧さや不 透明さにもうまく対処できるプロジェクトマネジャーは、組織内の変化を促す戦略 的イニシアチブも指揮できる。
ソフトウェア開発・統合・メンテナンスサービスのプロバイダーCognizant Technology Solutions Pvt. Ltd.のアソシエート・ディレクター、サラヴァナン・ ムグンド氏は、プロジェクト実現の実務慣行改善においてプロジェクトマネジャー の強力なツールとなるのは広範な知識だと述べている。
我々が話しを聞いた経営幹部の多くは、組織のための価値創出の重要性を強調して いる。(前述の)BorgWarnerのジャマル・ファルハット氏も、「プロジェクトマ ネジャーにとって、プロジェクトの需要に最大の影響を与えると思われる技術的ト レンドを理解することは重要であり、それによってはじめてプロジェクトに参加で きる。彼らの価値はプロジェクトマネジメントの機能的側面を既に超えている。」 と指摘している。
我々は、組織がこれからもプロジェクト・リーダーの開発に注力していくものと確 信している。チャンピオン組織は既にそのための投資を継続しており、81%が技術 的スキル開発(アンダーパフォーマー組織では13%)、79%がリーダーシップ・スキル開発(アンダーパフォーマー組織では13%)、70% が戦略/ビジネスマネジメント・スキル開発(アンダーパ フォーマー組織では11%)をそれぞれ優先させている。 さらに5分の4の回答者が、5年前と比較して現在はコミュ ニケーション、リーダーシップ、交渉力などのソフトスキ ルがより重要になっていると報告している(図7参照)。
「プロジェクトマネジャーにとっ て、プロジェクトの需要に最大の影 響を与えると思われる技術的トレン ドを理解することは重要であり、そ れによってはじめてプロジェクトに 参加できる。」
ジャマル・ファルハット
ボルグワーナー社CIO(最高情報責任者)
ギグエコノミー
世界経済のなかで最も斬新なトレンドはギグエコノミーの台頭であ る。この新語は正規雇用に対し短期契約やフリーランスなどの単発 の働き方の普及を意味する。組織はいずれも、スタッフのプロジェ クトマネジャーとコントラクターであるプロジェクトマネジャー間 の理想的なバランスを見い出さなければならない。
ギグエコノミーは様々な意味でプロジェクトの趨勢拡大にも反映さ れている。現在では多くの人々が自らの職を終身的雇用あるいは複 数年契約と捉えずに、組織から組織あるいはプロジェクトからプロ ジェクトへと円滑に渡り歩いている。
このトレンドは今年の調査結果に如実に現われており、組織の3分 の2以上(68%)が外注あるいは個人請負のプロジェクトマネジャ ーを使用したと報告している。このような状況下、プロジェクトマ ネジャーには機敏に動き、そして異なる種類の課題を対処する姿勢 が、また組織にはこれらプロジェクトマネジャーに対する十分な新 人研修や訓練が、それぞれ求められている。
プロジェクト専門家の成長という観点から最も重要なポイントは、 プロジェクトと戦略の関連性を理解し、プロジェクトマネジメント を支持する文化をもつ組織で働くことである。それにはコミュニケ ーションおよび知識移転の重視、プロジェクト成功に有効なエグゼ クティブ・スポンサーの必要性の認識なども含まれる。
組織の3分の2以上 が、外注あるいは コントラクターの プロジェクトマネ ジャーを使用した と報告している
結論
今日、我々が非常に複雑な世界で働き、生活していることに異論を唱える者はまずいな い。組織は熾烈な競争と、エクスポネンシャル技術、市場のシフト、社会的変化による 混乱の連続に直面しており、もはや単一の要素が成功を担保することはなく、常に複数 の要素が必要とされている。有能な組織は、実証されたプロジェクトマネジメント実務 慣行がより大きな成果と無駄の削減につながることを理解し、プロジェクトマネジメン トを重視、支持すると同時に、以下の実践を通じて成果を挙げている:
エグゼクティブ・スポンサーの積極的関与への投資
エグゼクティブ・スポンサーが積極的に関与する組織では、より良い協力関係/相互支 援、より高いプロジェクト成功率、より低いリスク発生率が報告されている。有能なプロ ジェクト・スポンサーは、プロジェクトの戦略との整合についてのコミュニケーション、 障害の除去、組織的変化の推進を通じて積極的に課題を克服するため、組織内における自 らの影響力を活用している。
プロジェクト・スコープの管理
プロジェクト・スコープを管理する組織は、コストの削減、顧客満足の向上、プロジェク ト・ベネフィットの拡大を実現できる。このような組織は、プロジェクト実施途中のス コープ変更が可能な反復アプローチの採用や、顧客とのフィードバックループの構築を通 じ、より多くの目標達成および将来的機会からの利益を叶えていると報告している。
価値の提供能力の強化
価値実現能力の成熟度が高い組織は、リスクを最小限化し、コストを管理する能力に長 け、市場の変化にもよりうまく適応できる。このような組織は、予測アプローチ、反復ア プローチ、漸進的アプローチ、アジャイル・アプローチを含む、すべてのアプローチのな かからプロジェクトおよび組織のニーズに適したものをプロジェクト実現に活用してい る。
組織は新しい働き方の開発の必要 性をも認識している。
これには完全な意識改革が求められる。 組織は顧客および被雇用者の行動に即座 に気づき、反応する能力によって、連続 する変化を受け入れている。すべての産 業界や地域が直面するデジタル化の波に 対応すべく、自らの実務慣行を進化させ ている。組織は今後も自らの発展のた め、競争力強化の一環としてもプロジェ クトの成功に注力していくだろう。
組織は本報告書で述べられた能力(現在 利用可能な能力)への投資、そしてその ような能力と将来的可能性を(その価値 を実際に発揮させるような方法で)結び つけることで、働き方への取り組みを変 えていくだろう。
組織がこれらの新しい能力をどのように 実用していくかについては、我々が今後1 年間実施する破壊的技術による影響の管 理についての調査で取り上げられる。そ のなかで我々はネクストプラクティスや 新技術が、プロジェクトマネジャー、チ ーム、ビジネスに及ぼす影響について深 く掘り下げる計画である。
PULSE OF THE PROFESSION® | 2018
付録
目次
セクション 1
世界の合計
セクション 2
上級幹部
セクション 3
PMO役員
セクション 1
プロジェクトマネジメント実務者 4,455名からの調査結果 (世界の合計)
Q: あなたの組織にはプロジェクトマネジメントオフィス(PMO)がありますか。
Q: あなたの組織にはどのタイプのPMOがありますか(あてはまるものを全てお答え下さい)。
Q: あなたの組織ではPMOと組織戦略との整合をどの程度と位置づけていますか。
Q: あなたの組織ではPMOを主にどのように位置づけていますか。
Q: あなたの組織では標準化されたプロジェクトマネジメント実務慣 行をどの範囲まで活用していますか。
Q: あなたの組織内でPMOは以下のどの役割 を果たしていますか。
Q: あなたの組織では以下の各項目についてどれくらいの頻度で活用していますか。
Q: 過去12ヶ月間にあなたの組織内で完了したプロジェクトの内、以下に 該当するアプローチによるものはそれぞれ何%だと思われますか。
Q: あなたの組織では現在次のものが存在しますか。
Q: あなたの組織はプロジェクトマネジメントの価値を完全に理解して いると思いますか。
Q: 組織のプロジェクト/プログラム/ポートフォリオのマネジメント成熟 度をどの程度と位置づけていますか。
Q: あなたは以下についてどの程度と位置づけていますか。
Q: 過去12ヶ月間にあなたの組織内で完了したプロジェクトの内、以下に該当す るものはそれぞれ何%だと思われますか。
Q: あなたの組織内で今年行われたすべてのプロジェクトの内、以下の複雑 さの程度に該当するプロジェクトはそれぞれ何%ですか。
Q: あなたの組織で過去12ヶ月間に開始したプロジェクトで失敗と考えら れるものについて、その主な原因は何ですか(3つまで選択して下さい)。
Q: あなたの組織における次の各項目の優先度はどの程度ですか。
Q: 過去5年間において、あなたの組織のアジリティはどのように変化しまし たか。
Q: あなたの組織では以下の各項目における優先度はどの程度ですか。
Q: 回答した組織の地域
Q: あなたの組織の年間収益は以下のどれに当てはまりますか。
Q: 過去5年間において、あなたの組織のアジリティのレベルが上 がった理由は何ですか。
Q: 以下の項目の中からあなたの組織の主な事業内容として最もあてはまるものを 選んで下さい。
Q: 過去5年のデジタルトランフォーメーションはあなたの仕事にどれくらい 影響を及ぼしましたか。
セクション 2
上級幹部447名 からの調査結果
Q: あなたは過去3年間における次の活動について、組織としての成功度合いをどの程度と考えています か。
Q: 同業他社と比較して、以下の各項目に対するあなたの組織のランク付けをどのように考えますか。
Q: あなたの組織では優先度の高いイニシアチブやプロジェクトを通した戦略 実行のマネジメントの責任の所在はどこにありますか。
Q: あなたの組織はプロジェクトマネジメントの価値を完全に理 解していると思いますか。
Q: あなたの組織では以下の各項目における優先度はどの程度ですか。
企業統計
セクション 3
PMO役員800名 からの調査結果
Q: あなたは過去3年間における次の活動について、組織としての成功度合いをどの程度と考えて いますか。
Q: 次の3年間において以下の様々な戦略実行上の側面を改善することはあなたの組織の競争力にと ってどれくらい重要であると考えますか。
Q: あなたの組織では優先度の高いイニシアチブやプロジェクトを通した戦略実行のマネジ メントの責任の所在はどこにありますか。
Q: あなたの組織はプロジェクトマネジメントの価値を完全に理解していると思いますか。
企業統計
Q: あなたの組織における次の各項目の優先度はどの程度ですか。
北京
バンガロール
ブリュッセル
ブエノスアイレス
ドバイ
ダンドーク
ロンドン
ムンバイ
ニューデリー
フィラデルフィア
リオデジャネイロ
サンパウロ
上海
深セン
シンガポール
シドニー
ワシントンD.C.
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